東北大学に免震構造の新研究棟が完成 理学研究科の新たな顔に
2015年2月26日公開
東北大学理学研究科に新しく完成した「合同C棟」の外観(提供:東北大学理学研究科)
東北大学理学研究科に新しい研究棟「合同C棟」が完成したことを祝い、2月19日、同研究科で竣工記念式典があった。2011年の東日本大震災で被災し、大きな損傷を受けた化学棟(化学専攻)と物理研究棟(天文学専攻、地球物理学専攻)の研究室が入居する。
新しい研究棟は地上8階建で、延べ床面積は約9千5百平方メートル。免震構造を採用し、72時間電力供給が可能な非常用電源設備も備えている。2階にはセミナースペースやカフェなどの交流スペースを配置し、学生からの要望が多かったコンビニエンスストアも3月にオープン予定。12月開業予定の仙台市営地下鉄東西線の青葉山駅に面し、理学研究科の"顔"となる。
東北大学理学研究科合同C棟竣工記念式典のようす=2月19日、合同C棟2階「青葉サイエンスホール」
式典では、理学研究科長の早坂忠裕さんが「国立大学の改革が求められる中、本研究科の強みを活かし何をすべきか、ミッションの再定義を行っている。本研究科の強みは、幅広い分野をカバーする多様性と、実験や観測を活発に行っている伝統。東北大学の他部局とも連携を図りながら、本研究科の強みを活かし今後も成果をあげていきたい」と式辞を述べた。
続いて、総長の里見進さんが「東日本大震災で理学研究科も高層階で甚大な被害があり、教育研究機能に支障をきたしたが、教員や学生の努力で震災以前に勝るとも劣らない成果があった。これまでも世界をリードする成果をあげられているが、新しい環境でますますの成果をあげ、新しい歴史を踏み出して欲しい」と挨拶した。
祝辞を述べる仙台市天文台台長で東北大学名誉教授の土佐誠さん。仙台市天文台と理学研究科は連携と協力に関する協定を結んでいる
来賓の土佐誠さん(仙台天文台台長)は「物理研究棟は宮城県沖地震でも被害を受け、年々大きくなるひびを心配していた。補強工事が完了した翌年に今度は東日本大震災が発生。このたび新棟が完成し、長年の心配が解消したと喜んでいる。曲線を取り入れた斬新なデザインの新研究棟のように、自由で柔軟な発想で研究や教育の成果がますますあがることを期待している」と祝辞を述べた。
上田実さん(化学専攻教授)と井上邦雄さん(ニュートリノ科学研究センター長)による講演会のようす
式典後は講演会が行われ、上田実さん(化学専攻教授)が「天然物ケミカルバイオロジー」、井上邦雄さん(ニュートリノ科学研究センター長)が「ニュートリノが伝える地球内部の活動」と題して研究を紹介し、理学研究の魅力をいきいきと伝えた。
続けて内覧会も行われ、惑星系実験室(地球物理学専攻)や合成・構造有機化学実験室(化学専攻)、望遠鏡(天文学専攻)を見学した。また、望遠鏡を寄贈したIK技研代表取締役の石川勇さんには感謝状が贈られ、天文学専攻の教員や学生たちとの記念撮影があった。最後に、2階のカフェで祝賀会があった。東日本大震災の苦労を乗り越えた関係者たちは、新しい研究棟の完成を喜ぶと同時に、さらなる研究力向上にむけて心新たにしていた。
惑星系実験室(地球物理学専攻)
合成・構造有機化学実験室(化学専攻)
望遠鏡を寄贈したIK技研代表取締役の石川勇さんと天文学専攻の教員・学生たちとの記念撮影
2階セミナースペース
インタビュー
■里見進さん(総長)
東日本大震災発生からの4年間、仮設で不自由な思いをしたと思う。これまでも一生懸命頑張り、震災以前と変わらない成果をあげてくれたが、今回新しい建物が完成し、それ以上の成果をあげてくれると期待している。仙台市営地下鉄東西線が開業すれば、まさにここが地下鉄を出て東北大学を見た時のメインストリートであり、顔になる。それに相応しい良い理学研究科をぜひつくって欲しい。
■早坂忠裕さん(理学研究科長)
本研究科の特徴は、一つは多様な分野の先生がいること、もう一つは実験や観測を一生懸命やっていること。今日の講演会でも、上田先生は化学専攻だが生物との関係を、井上先生は素粒子物理学の専門だが、天文や地球物理、地学にもまたがる話をされていた。このように幅広い分野の多様な人がいることが大事であり、そのような研究をどんどん発展できると良い。また地下鉄開通時には、新しい研究棟が本研究科の玄関になるため、本研究科がいきいきと活発に研究する姿を、広報やアウトリーチを通じて見える形にしたい。