生の進学情報、正確に知って/仙台で合同受験相談会 【インタビュー:各私学・高専の入試制度はどう変わる?】
2012年11月22日公開
今月11日に開催された進学イベント「進学情報フェスティバルCan」のようす=アエル(仙台市青葉区)
生の進学情報を受験生や保護者に伝えようと、合同相談会「進学情報フェスティバルCan」が11日、アエル(仙台市青葉区)で開催され、私立・公立高校や国立高専など約30校が参加し、受験生・保護者らの相談に面談形式で応じた。
本イベントは、全国学習塾協会が毎年開催しているもので、今年で24回目。学習塾による学習相談会や入試対策講座なども行われ、受験生らは志望校選択や学習方法などについてアドバイスを受けていた。
同イベント実行委員長の小野寺和行さん
受験について様々な情報が飛び交う中、受験生と保護者に、生の情報を正確に伝えたい。その思いひとつで24年前から同イベントを開催してきたと話す小野寺和行さん(実行委員長)は「高校の先生から生の声や意気込みを聞くことで、子どもたちも前向きになる」と効果を語っている。
【各校担当者インタビュー】
「公立高校の入試制度改革を受けて、各私学・高専は変わるのか?」
宮城県では平成25年春から公立高校入試が新しい制度に変わる。公立高校では推薦入試が廃止され、各高校が定めた出願条件を満たす生徒が出願できる「前期選抜」と、前年度の一般入試に相当する「後期選抜」に再編されるのが大きな特徴だ。
ところが学習塾関係者によれば、新制度に対して「不安を感じる生徒や保護者も少なくない」「私立高校の新たな制度もうまく活用したいが把握しきれない」現状があるという。
そこで本稿では、同イベントに参加した私立高校・国立高専の担当者に、インタビュー取材を実施。今回の公立高校の入試制度改革を受けて、各校の入試制度は変わるのか?それとも変わらないのか?入試から見える各校の特色について聞いた。
■従来通りに実施する。国公立大学合格実績に自信。
/古川学園高等学校(進学指導部長 成本豊さん)
公立高校入試の新制度が導入されたことで、本校が大きく変わったことはない。従来どおり学業特待生入試(1月16日)を実施し、宮城県共通の一般入試(A・B日程)を行う。今年から一般入試(A・B日程)が全県同一になったことに対応する。
私学は全て特色のある学校だが、国公立大学合格を希望する生徒は、ぜひ本校を受験していただきたい。本校の特色は、どこよりもそのノウハウを持っていることだ。
■金銭的な入試特典を増やす。「美術・デザイン科」新設。
/東北生活文化大学高等学校(入試広報部 部長 小野安史さん)
普通科にあった「美術コース」が、来年度から「美術・デザイン科」として独立し、3学科(普通科、商業科、美術・デザイン科)体制になる。どの学科も、A・B日程とも自由に受験可。
金銭面に関する入試特典を増やした。一般入試は、一回分の検定料で、A・B日程の2回分を受験できる。また推薦入試については、もし不合格の場合でも、一般入試(A・B日程)を希望する場合、一般入試の検定料を徴収しないため、推薦入試の検定料分のみで最大3回受験できる。このほか、専願や推薦入試の合格者は、入学金(5万円)を全員免除する。
「一人ひとりが輝く学校」―生徒の才能を見つけて伸ばすのが本校の特徴。各校とも特色があるが、自分の進路に合わせてよく先生と相談し、自分に合った学校を受験して欲しい。
■特別進学コースのみA日程限定。スカラー選抜入試の敷居下げた。
/仙台白百合学園中学・高等学校(生徒募集担当 大枝直美さん)
A・B日程で異なる入試問題を出すため、合格基準に不公平が起こらないよう配慮し、LSコース(特別進学コース)のみ受験可能日をA日程のみに限定した。
また本校の特徴として、入試時の点数によって奨学金を与える「スカラー選抜入試」がある。公立高校第一志望でも、スカラー選抜入試を選択する敷居を下げるため、合格後スカラーの資格を保持するためにかかる経費を一時金(入学金)のみに減額した。
本校はコース制を取り入れているが、安易に偏差値のみで考えるのではなく、事前に各コースの特徴を勉強し、自分のやりたいことに最も合ったコースを選んでぜひ出願して欲しい。
■従来通りに実施する。東北学院はA日程、榴ケ岡はB日程のみ。
/東北学院中学校・高等学校(副校長 大友正昭さん)
一般入試は同法人である榴ケ岡高校(男女共学)と東北学院高校(男子校)で日程が重ならないよう、東北学院はA日程のみ実施、榴ケ岡はB日程のみ実施する。受験に関しては推薦も一般入試も大きな変化はないため、逆に受験生にとっては受験しやすいのでは。
将来どんな仕事をしたいのか、その夢を実現するためにはどんな進路選択をすればよいか、よく考えて学校を選択して欲しい。本校生徒はほぼ100%大学受験を希望する。本人の夢を実現できる指導体制をとっている。
世のため人のために貢献できる人材育成が、本校の建学の精神。人のために能力を発揮して頑張りたい熱意を持つ生徒に、ぜひ来て欲しい。一度しかない大事な人生、よく考えて、一生懸命頑張って欲しい。
■記述式からマークシート形式へ変更。一般推薦・特別推薦、専願入試あり。
/宮城学院高等学校(教頭 後藤文男さん)
一般入試A・B日程はどちらも受験可能。いずれの日程も条件は同じ。回答方式を従来の記述式からマークシート形式へ変更した。
本校が第一志望の場合、推薦入試(一般推薦と特別推薦の2種類)あり。一般推薦は「アドバンストコース」で評定平均値4.4以上、「クリエイティブコース」で評定平均値4.0以上が必要。一方、特別推薦(「クリエティブコース」のみ)では評定平均値3.5以上が必要だが、学内外問わず部活動やボランティア活動で特記すべき活動がある場合に受験可。また本校を第一希望とする場合、受験後は必ず本校に入学することが条件で、専願入試もある。
受験については、過去問対策をしっかりと行うことが大切。そして健康第一に、しっかりと健康管理し受験に臨んでもらいたい。
■B日程は高得点の2教科のみで合否判定。公立高校志望者むけに「公立併願」「学業奨学生」あり。「看護・医療進学系」新設。
/聖和学園高等学校(募集対策推進部 部長 鈴木光紀さん)
A日程は従来通り実施するが、B日程は受験した3教科(国・数・英)のうち、高得点だった2教科のみを合否判定に使用する新しい制度を導入する。また、公立高校と併願可能な「公立併願」は、私立高校の中で本校を第一志望とすることを条件に、専願に順する形で優遇させていただく。
このほか「学業奨学生」は、私立高校の中で本校を第一志望とすることを条件に、公立高校との併願も可能。公立高校の滑り止めとして、公立高校後期入試の結果が出るまで本校への「学業奨学生」としての入学の権利が留保される。
また、震災後、看護師を希望する生徒が増加したことに対応し、「特別進学文理コース」に「看護・医療進学系」を新設する。看護学部や看護学校への進学指導が主だが、2年生次から基礎看護を週2時間実施し、看護の知識や技術、心構えを2年間学ぶことができる。地元に貢献できる人材を育成したい。
聖和学園としてメリットある入試制度をつくった。授業料などでメリットがあることを知らないまま入学する生徒もいて勿体ないと感じている。いろいろ自分で調べて、入試制度を理解した上で、有効に活用して出願していただきたい。
■併願可能な「専願特約」で入学時お祝い金支給
/常盤木学園高等学校(教諭 佐久間隆男さん)
一般入試に「専願特約」を設けた。公立高校・他の私立高校と併願し、公立高校入試で不合格となった場合、本校へ入学する生徒に対して、入学時お祝い金(5万円)を支給する。ぜひ併願校として利用してもらいたい。
学力のみを問うのではなく、本校の創立の精神である「自由と芸術」について、きちんと理解して、実行できる人材を求めている。様々なコースを用意しているので、ぜひ本校にチャレンジして欲しい。
■公立併願可能な「自己推薦奨学生入試」。奨学生制度を充実化。コース再編。
/聖ドミニコ学院中学校高等学校(入試広報部 部長 梛野祐二さん)
今年から公立高校併願可能な「自己推薦奨学生入試」を実施。この奨学生の権利は、公立高校入試の後期選抜の翌々日まで保持することができる。奨学生制度は、評定平均値(中学校2・3年生時の5教科)に応じて4段階(A~D)あり、全コースに対して設置している。一般推薦入試(専願)についても特典は同じ。また、一般入試の高得点者についても、奨学生の資格を得ることができる。
このほか「特別進学コース」を再編し、「α系」は勉強中心、「β系」は部活等と両立可能なコースとした。本校は伝統を生かしつつ、コースの再編などを含めて生徒の希望進路すべてに対応できるよう学習環境を整えている。ぜひ受験を検討していただきたい。
■敢えて今年は「例年通りの募集」。4年生大学への進学者70%。系列大学あり。
/尚絅学院中学校・高等学校(教頭 竹内紀幸さん)
保護者や先生方を考えた時、公立高校の新入試制度への対応に苦慮するだろうと想定して、敢えて今年は「例年通りの募集」で変更しない方針を立てた。入試問題についても、例年通り、公立高校の形式に近いものを実施する。
本校は、国公立も含めた4年生大学への進学者が70%の進学校。尚絅学院大学は系列校。進学校として入学した生徒の皆さんの進路については保証する。皆さんの持っている力を十分発揮してもらえる学校なので、ぜひ入学してもらいたい。
■平成25年度「仙台城南高校」誕生。B日程は理社のみ。「自己推薦入試」や公立併願可の「単願」あり。
/東北工業大学高等学校(教頭 安久津 徹さん)
平成25年度から本校は「仙台城南高校」として生まれ変わる。名前を変えることが目的ではなく、新学習指導要領に示される内容を如何に具現化するかを念頭に置き、「探究科」「特進科」「科学技術科」を新たに設置。「生きる力」を実現するための学科構成として、探究科に大きな特色を示しながら、新しい教育活動を展開する。
入試に関しては、試験科目がA・B日程で異なるのが、本校の大きな特徴。A日程は国数英の3教科だが、B日程は理社の2教科のみ。探究科における「探究活動」とは、我々が生きていくために必要な情報を、問題意識を持って収集したり、まとめていく活動をいう。これを支えるため、自然科学的・社会科学的な現象に興味・関心を持つ生徒を受け入れたいという観点から、B日程は理社のみという試験科目を用意した。
このほか、中学校の推薦書なしでも自分自身を推薦できる「自己推薦入試」を用意。また、公立高校とならば併願可能な「単願」も新しく導入した。このような制度をうまく利用して、本校をぜひ受験し、入学してもらいたい。
■高校とは異なる高等教育機関。将来エンジニアを目指す人に最適な進路形成。
/国立仙台高等専門学校(副校長 佐藤公男さん、石山純一さん)
高等教育機関である高専は、高等学校とは異なるため、入試制度は基本的には変わらない。高専の5年間で、高校3年分と大学4年分を圧縮し実学的な部分を学ぶ。始めからエンジニアを目指して実力をつけることができる。
卒業後は、25%が専攻科に進学し(工学士を取得可能)、25%が主だった国公立大学3年次に編入し、50%が就職する(就職率ほぼ100%)。多様なキャリア進路形成が可能だ。
高専に入ってから、将来の方向性を考えるのは間違い。将来自分はものづくりをやりたい、エンジニアになりたいと、しっかり目標を持った上で、高専を受験してもらいたい。
■多様なニーズに対応。「公務員養成系」「スポーツ健康系」新設。バス路線も新設。
/東北高等学校(教育推進室 室長 阿部二三男さん)
本校では「面倒見のよい教育」をキャッチフレーズに、生徒の多様なニーズに応えられるコース制を設けている。来年度からの高校入試改革を受け、大学進学・就職・公務員・資格進学を目指す「文教コース」に新たに「公務員養成系」「スポーツ健康系」を設置。進学コースは従来通り「創進コース」と「文理コース」の2種類ある。
泉キャンパスには「スポーツコース」がある。ここでは宮崎愛やダルビッシュ有ら世界に羽ばたく選手を育てている。また、真面目に努力しているけども学力がなかなか伸びない生徒を対象にした「総合コース」を昨年度から設置し、英数国については3人の教師で授業を実施。痒いところに手が届くコースとなっている。
また昨今、父親が職を失うなどして途中で学校で行けなくなる生徒も増えている。そんな生徒たちのために、「総合学習センター」を小松島キャンパスに設置。学校に行けなくなった子どもたちが、無理のない学習形態で単位を取れるよう支援している。
このように多様なニーズに応えられるコースを設け、多種多様な能力を育成する環境を整えている。また、平成25年度の全県一区化をにらんで、バス路線を南に新設。すでに今年から多賀城方面にもバス路線を新設している。
皆さんは今、どちらかを選ばなければいけない人生の岐路に立っているが、自分の特性を見据え、夢が叶う選択肢を選んでほしい。それは勉強でもスポーツでも良いし、学校に入ってから考えても良いが、自分の夢を叶えるため、自分に合った学校を自分で納得した上で選んでほしい。きっと自分の目指す学校が必ずあると思う。
■宮城野校舎を再建。フレックスコースを充実化させ、就職に力を入れる。
/仙台育英学園高等学校(教頭 澤田敏明さん)
東日本大震災の影響で全面建替中の宮城野校舎が、来年3月に完成する。建替中、生徒たちには多賀城校舎で勉強してもらったが、来年度からは、「特別進学コース」と「英進進学コースⅡ類」が宮城野校舎で、「外国語コース」と「英進Ⅱ類」と「フレックスコースⅠ類・Ⅱ類」が多賀城校舎で勉強することになる。
これまで宮城野と多賀城に分かれていたフレックスコースを、土地の広い多賀城校舎にまとめた。フレックスコースでは専門学校や就職を希望する生徒が多いため、学習拠点を変えることで、就職に有利な講座を充実化させ、生徒のニーズに応えたい。
私学の役割は、生徒の魅力を引き出し、光らせることだと考えている。公立高校の入試制度が変わり、不安も抱いていると思うが、私立高校でも皆さんのニーズに応えられる指導をしていきたいと考えている。最後まで諦めずにぜひ頑張って欲しい。