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第2回EBISワークショップレポート「青森県よろず支援拠点 IoT活用セミナー」

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第2回EBISワークショップレポート 青森県よろず支援拠点IoT活用セミナー 取材・写真・文/大草芳江

2019年05月07日公開

 産業技術総合研究所東北センター(以下、産総研東北センター)が東北地域新産業創出に向けて、産学官金"協奏"による新たな企業支援の試み「Tohoku Advanced Innovation Project(TAIプロジェクト)」を2018年夏からスタートさせた。産業・技術環境の変革の波に乗って企業が大きく発展できるよう、主に経営層を対象に、さまざまな先端技術を体験できる勉強会「EBIS(Expanding Business Innovations for executiveS)ワークショップ」を開催している。2018年度に東北各地で計4回実施されたEBISワークショップの模様をレポートする。

【関連記事】
◆ 産総研「TAI(鯛)プロジェクト」始動!~東北発イノベーションに向けて~
◆ 第1回産総研EBISワークショップレポート「中小企業のIT化からIoT化を支援するMZプラットフォームセミナー」
◆ 第2回産総研EBISワークショップレポート「青森県よろず支援拠点IoT活用セミナー」
◆ 第3回産総研EBISワークショップレポート「わが社で使える放射光」
◆ 第4回産総研EBISワークショップレポート「エッジAIがビジネスを変える」

※ 本インタビューをもとに産業技術総合研究所様「TAIプロジェクト報告書」を作成させていただきました。詳細は、産業技術総合研究所東北センターHPをご覧ください。


第2回 産総研EBISワークショップ レポート
「青森県よろず支援拠点 IoT活用セミナー」

「青森県よろず支援拠点 IoT活用セミナー」のようす=青森県産業技術センター工業総合研究所(青森県青森市)

 「青森県よろず支援拠点 IoT活用セミナー」が12月5日、地方独立行政法人青森県産業技術センター工業総合研究所(青森県青森市)で開催され、中小企業や支援機関担当者ら22名が参加した。はじめに、本セミナーを主催する4つの支援機関の担当者から各施策について紹介があった後、産業技術総合研究所(産総研)が開発・配布するソフトウェア開発支援ツール「MZプラットフォーム」について、同ツール担当者による講演と導入企業による事例紹介があった。また、セミナー終了後は希望者を対象にした個別相談会や、会場となったIoT開発支援棟の見学会も開かれた。


施策紹介① 青森県の事業紹介
/ 青森県新産業創造課 情報産業振興グループ 主幹 工藤 鉄平 さん

 青森県では、経済産業省が推進する「IoT推進ラボ」に今年度選定され、県内の産学官連携によるIoT推進体制を構築したところです。事業内容としては、観光分野、特にインバウンド対策にIoTを活用するプロジェクトと、ものづくり分野におけるIoT関連の新製品・サービス開発や新事業展開のふたつの方向性で進めています。支援策として、試作開発補助金や実証事業等のIoTビジネス創出支援のほか、ビジネスセミナーやセキュリティ研修等、企業の技術者むけに濃い内容の研修や交流会の機会などを多数用意しています。青森県として県内企業のIoT活用を積極的に支援させていただきますので、お気軽にご活用・ご相談ください。


施策紹介② 青森県よろず支援拠点の事業紹介
/ 青森県よろず支援拠点 コーディネーター 市田 淳治 さん

 「よろず支援拠点」とは、2014年度から国が各都道府県に設置している事業で、複雑・高度・専門的な経営課題を抱える中小企業・小規模事業者に対して、起業・成長・安定の各段階の課題やニーズにきめ細かく対応するワンストップ型の経営支援窓口です。主な役割は、総合的・先進的な経営のアドバイス、地域の支援機関や専門家、公的機関等によるチーム編成型の支援、緊急な課題やご要望等が発生した際に適切な相談先を紹介するといったワンストップサービスです。よろず支援拠点では、新商品開発や販路開拓、金融対応等、各分野の専門家が皆様のご相談を承ります。今年からインバウンド対策の女性コーディネーターも加わりました。この体制を我々は「大学病院型」と称し、どのお医者さんが診断し、どんな処方箋をもらうか、まずはお越しいただく窓口を一箇所につくる体制を構築している次第です。ぜひお気軽にご相談ください。


施策紹介③ 工業総合研究所IoT開発支援棟の紹介
/ 工業総合研究所 電子情報技術部長 小野 浩之 さん

 今回のセミナー会場となっているIoT開発支援棟は、今後進展する第4次産業革命に対応した企業支援体制の整備を目的に、IoT、ビックデータ、AI等の先端技術に関する人材育成や研究開発、技術支援等に取り組む拠点施設として、2018年10月に開所しました。内閣府の地方創生拠点整備交付金や経済産業省のグローバル・ベンチャー・エコシステム連携加速化事業費補助金を活用して整備した施設・設備で、IoTデバイスの設計・試作から評価まで、同じ場所で一貫して行えることが特長です。建物は延床面積約420平米の2階建てで、1階には電子基板製造装置や高精細の3Dプリンター、3Dスキャナー、構造解析装置などの最新設備を導入し、2階にはコンピューターを利用した設計(CAD)の実習室や研修室を設けています。また、技術研修会開催のほか、IoT開発共通プラットフォームの提案や、IoTの開発者と利用者のマッチングを図るための異業種交流ワークショップ等も開催します。IoT開発支援棟の完成を機に、2014年に設立した「あおもりIoT研究会」の人材育成等の活動をより一層活発にし、これらの活用によって人材育成や新規IoT商品の開発等につなげ、県内産業振興に貢献していきたいと考えています。


施策紹介④ 国立研究開発法人産業技術総合研究所の事業紹介
/ 産業技術総合研究所 東北センター所長代理 伊藤 日出男 さん

 産総研は、旧通商産業省工業技術院の15の研究所と計量教習所が2001年に統合・再編された研究所です。2015年度からの第4期中長期目標期間(5年間)のスローガンは(技術を社会へ)「橋渡し」の実現で、その実現のために研究組織も7つの領域に再編しました。人員は約一万人で、産総研の約7割の予算と研究者が集積するつくばセンターを中心に、全国7ヶ所に展開する地域センターが、それぞれ重点化研究の推進に取り組みながら各地域の企業との密接な連携に取り組んでいます。技術コンサルティングから事業化支援まで、さまざまなステージで企業の皆様をサポートする連携メニューをご用意しています。また、東北各県の公設試験研究所等の方にも産総研イノベーションコーディネーター(IC)を委託し、地域の企業の皆様との連携を深めています。私ども東北センターと企業様の連携事例としては、非常に高い耐熱性・耐久性・ガスバリア性を有する粘土系材料「クレースト」の技術を利用した玉虫塗ワインカップや、表面の凸凹が6.3ナノメートル以下の極めて平坦な超高精度平面基板の開発などがあります。

 さらに、東北センターでは2018年夏から新たに「Tohoku Advanced Innovation Project」、略称「TAIプロジェクト」を立ち上げました。産業・技術環境の急速な変革が進みつつある中、各企業に対する新たな市場の気づきと明確化から新規事業の挑戦を掘り起こし、最終的には新たなニーズとシーズを備えイノベーションによる新産業構造を担えるような企業に発展いただくため、産総研がハブとなり地域の支援機関の皆様と共に支援を進めるものです。その気づきを得ていただくための勉強会は「Expanding Business Innovations for executiveS ワークショップ」、略称「EBISワークショップ」と名付け、ぜひ中小企業の社長様に鯛を釣り上げ恵比寿顔になっていただきたいと考えています。本日のセミナーも産総研ではEBISワークショップとして位置づけています。中鉢理事長の言葉「敷居は低く、間口は広く、奥行きは深く、志は高く」をモットーに、公設試験研究所等の皆様とも協働しながら企業の方々をご支援させていただきたいと思います。


■ 講演1 「中小製造業のIT化支援ツールMZプラットフォームについて」
/産業技術総合研究所 製造技術研究部門 機械加工情報研究グループ長 古川 慈之 さん

☆→ 講演内容はこちら


■ 講演2 「MZプラットフォーム導入事例の紹介」
/株式会社日新電機システム 設計課長 金城 聡 さん

☆→ 講演内容はこちら


参加者の声

― 本日のセミナーに参加した動機と感想を教えてください。

◆「IoTどう活用するかが悩みどころ」
/ 三共計測プラス株式会社 代表取締役 三橋 知巳 さん

 「青森県IoT推進ラボ」のセミナーに参加し、今後IoTに関わる仕事をしたいと考え、IoTデバイスの開発や使い方について勉強中です。IoTデバイスの開発後にどう利用するかが悩みどころだったため、今回さまざまな事例を見ることができ、イメージが広がりました。MZプラットフォームのことは今回初めて知ったため、早速試してみたいと思いました。製造業ではないため自社でどのようにMZを利用できるかのイメージはよくつかめませんでしたが、産総研がサンプルを多数用意しているという話だったので参考にしたいと思います。


◆「現場の協力を得ることがIoT化の現実的な問題」
/ 株式会社ジョイ・ワールド・パシフィック 取締役 木村 祝幸 さん

 IoT向け省電力広域の無線通信「LPWA(Low Power Wide Area)」通信ネットワークのひとつ「Sigfox」(シグフォックス)を利用した開発を青森県産業技術センター工業総合研究所と共同研究しています。その縁で誘いがあり、中小製造業向け講演ということで、自社工場の生産コストの見える化への利用等を期待して参加しました。MZを使わなくても、自社スキルで実現できそうとは感じましたが、MZを利用すれば取っ掛かりが早く、いろいろ応用できてよいかもしれません。社内で検討したいと思います。一方で、製造現場はパソコン入力など新たな作業がひとつ増えるだけでも嫌がるため、現場からの協力を得ることが現実的な問題です。


◆「低コストで簡単にIoT実現できる点が魅力」
/ アンデス電気株式会社 経営企画 専任参事 滝野 弘文 さん

 製造業である弊社は第4次産業革命を推し進めたいと考えていますが、中小企業の立場ではどうしてもコストがネックになります。そんな中、産総研が開発・配布しているMZは、あまり費用をかけずに簡単にIoTを実現できるものと期待し、まずMZの概要を知るため今回のセミナーに参加しました。MZは自社でソフトウェアを作成し自由に組み替えられる点が有意義で、当社でも活用できそうという印象を持ちました。一方で企業様の事例発表にもあったように、実際に使う現場の社員たちからも協力を得られるよう全社的に進めなければ、たとえ導入してもうまくまわらないだろうという印象も持ちました。これはMZに限らず何をするにも同じことが言えますが、あとは進め方だと思います。早速、社内にMZを紹介しようと考えています。


主催者の声

― 本日のセミナーを産総研と共同で主催した動機と感想を教えてください。

◆「身の丈に合った開発から始めるのにMZは最適」
/ 青森県産業技術センター 工業総合研究所 所長 櫛引 正剛 さん

 工業総合研究所は、県内企業のものづくり技術の高度化と、IoTを利用した製品づくりを支援するため、地方創生拠点整備交付金等を活用して「IoT開発支援棟」を整備しました。IoTを知っている人と知らない人では温度差があるため、少しでも多くの事例を知ってもらおうと、今回のセミナーを企画しました。県内のものづくり企業が自社の生産工程の見える化をIoTによって実現しようとする時、最初から大掛かりなシステムを導入するのではなく、自分たちで身の丈に合ったシステムから開発を始めた方がうまくいくと私は考えています。無償で提供されているMZはコストをかけずに利用できるため、まずMZを知っていただき、IoT化をどのように進めていくかについて考える機会につながればと思い、古川さんに講演をお願いすることにしました。講演では導入企業による事例も聞くことができ、その狙い通りだったと感じました。また、参加企業からも「自社工場の見える化にぜひ取り組んでみたい」との声があり、これも狙い通りの結果だと実感しています。


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