取材・写真・文/大草芳江
2012年8月28日公開
人間は、「なぜ?」と思うものに対してわかりたいと思う、
非常に単純で基本的な欲求を持っている。
高橋 隆 Takashi TAKAHASHI
(東北大学原子分子材料科学高等研究機構教授
/東北大学大学院理学研究科物理学専攻教授)
1951年新潟県生まれ。物性物理学、光電子分光が専門。1974年東京大学理学部卒業。1974-1977年会社勤務。1977年東京大学大学院理学系研究科入学、1981年中途退学(1982年理学博士)。1981年東北大学理学部助手、1994年助教授、2001年大学院理学研究科教授を経て、2007年から東北大学原子分子材料科学高等研究機構主任研究員(教授)(理学研究科教授兼任)。2005年文部科学大臣表彰(科学技術賞)。
一般的に「科学」と言うと、「客観的で完成された体系」というイメージが先行しがちである。
しかしながら、それは科学の一部で、全体ではない。科学に関する様々な立場の「人」が
それぞれリアルに感じる科学を聞くことで、そもそも科学とは何かを探るインタビュー特集。
黒板の色はなぜ黒いのか?銅線が電気を流しやすいのはなぜか?
実は、物質の性質のほとんどすべてが、電子の性質で決まっている。
その電子の状態を、直接的・単純に見てやろうという実験手法が、
「光電子分光(こうでんしぶんこう)」だ。
世界一の分解能を誇る、高橋隆研究室の光電子分光装置には、
世界でここにしかない分解能を求めて、世界中から試料が集まる。
研究室の壁面にズラリと貼られた英国科学誌「Nature」が、
ここで、次々と新しい発見が生まれていることを物語る。
どのようにして世界最高性能の光電子分光装置は生まれたのか。
高橋さんに、そのプロセスを聞いた。
<目次>
■高橋隆さんインタビュー
・こんな簡単な実験手段が世の中にあるのか!
・これまでの研究は全部やめて、これからは高温超伝導だけで行く
・なぜ世界一の分解能を達成する装置はできたのか
・なぜ超伝導は起こるのか
・世界最高の性能を誇るスピン分解光電子分光装置を開発
・強力なモチベーションがなければ研究は飛躍しない
・宇宙の中で知っているのは僕だけかもしれない
・「何になれるか?」ではなく「何になりたいか?」
・文章を書くことと実験から新しい発見を導くことは同じ
■学生インタビュー(東北大学大学院理学研究科物理学専攻 光電子固体物性研究室)
・装置開発から測定まで
・世界最先端で戦うこと
・物理に対するシビアさ
・後輩へのメッセージ
東北大学原子分子材料科学高等研究機構教授の高橋隆さんに聞く
こんな簡単な実験手段が世の中にあるのか!
―どんな研究をしているのですか?その研究をなぜやろうと思ったのか、何をおもしろいと思っているかを中心にお話ください。
一言で言えば、「光電子分光(こうでんしぶんこう)」という実験手段で、物質の電子状態を調べることによって、その物質がなぜその物質であるのか?その理由を明らかにしようという研究をしています。
物質には、いろいろな性質があります。例えば、黒板の色はなぜ黒いのか?銅線が電気を流しやすいのはなぜか?実は、その性質のほとんどすべてが、電子の性質で決まっているのです。
ですから、電子の性質を調べることができれば、その物質がなぜその物質であるか?がわかるわけです。電子の性質を調べる方法はいろいろありますが、ある意味で光電子分光は一番、直接的で単純な実験手法なのです。そこに一番の動機があります。
―「光電子分光」は「電子の性質を調べることができる、直接的で単純な実験手段」ということですが、どのようにして電子の性質を調べるのですか?
光電子分光は、一般の人にはあまり馴染みのない言葉かもしれません。光は波であると同時に粒であるわけですが、光電子分光は、1905年にアインシュタインが提案した「光量子仮説」に基づいた実験手法です。
物質に光を当てると、光は反射や回折をしますが、それは光の「波」の性質によるものです。けれども、「光は粒」と考えますと、粒が物質に当たった時、その光が物質中の電子にエネルギーを与えて電子を外に叩き出すのです。すると、もともと物質の中にいた電子が物質の外に出てきます。
僕らは、電子がその物質の中でどういった状態にあるのかを一番知りたいわけです。そのためには、物質の中にいる電子そのものを調べるよりも、物質から電子を外に引っ張り出してやれば、いろいろなことが直接調べやすいのです。
―他の実験手段との大きな違いは何ですか?
ほとんどの実験手段は、電子を物質の中に置いたままで、外から叩いたり熱したり電流を流したりいろいろなことをして、その反応を見ているわけです。だから、あくまで間接的なんです。靴の裏から足を掻くみたいなところがあって。
けれども、光電子分光は電子そのものを引っ張り出して見る手法なので、「こんな簡単な実験手段が世の中にあるのか!」と、初めて知った時は大きなショックを受けました。
―具体的には、光電子分光で、電子のどんな性質が調べられるのですか?
一度外へ電子を出してしまえば、あとは電子のエネルギーや運動量など、いろいろな性質を調べることができます。そして、調べた電子の性質を物質の中に戻してやると、その物質の中での電子の状態がわかります。
すると先ほどもお話した通り、物質の電子状態がわかれば、物質がなぜ金属になっているのか?物質がなぜ青い色をしているのか?といったことが、わかるわけです。
このように光電子分光は、光を当てて出てきた電子を調べるという非常に単純な実験手段ですが、そこから得られる物理的な情報は直接的で、電子そのものの性質が見えるため、非常に魅力的に思えたのです。それが光電子分光の研究を始めたきっかけです。
―光電子分光にはどのようにして出会ったのですか?
実は私、当時は大学を出て会社で働いていました。会社で仕事の合間にいろいろな論文を読んで勉強している時、たまたま光電子分光を知りました。それで「こんな簡単な実験手段が世の中にあるんだ!じゃあ、もっと勉強したいな」と思って、大学に戻ったのです。
―それくらい光電子分光に惹かれたのですね。それ以来ずっと光電子分光一筋ですか。
ええ、そうです。ずっと、それ一本。本当に、光電子分光しかやっていないんです。
―「光電子分光」は、当時どれくらい確立された実験手段だったのですか?
光電子分光そのものは比較的新しい実験手段ですが、理論的な基礎は、先ほど少し触れたように、約100年前のアインシュタインの仮説に基づいています。
それが実験手段として1950年頃からぼちぼちと出始め、1960年頃から実験法の体(てい)を成してきました。私が参入したのは1980年頃ですので、光電子分光は実験手段として、あったことにはあったのです。
けれども、私が研究を始める前までの光電子分光は、エネルギーの分解能が非常に悪く、電子の性質は見えるけど、ぼんやりとしか見えませんでした。当時はそれで良かったかもしれませんが、電子の性質をちゃんと調べようと思ったら、もっと詳しく調べたいわけです。
細かい構造を調べることができれば、それだけより正確なことがいろいろわかります。そのため私自身が光電子分光を始めてから、特に集中的に努力したことは、エネルギーの分解能をどんどん上げることでした。
これまでの研究は全部やめて、これからは高温超伝導だけで行く
―そこまで詳しく「電子の性質を見たい」と思った動機は具体的に何かあったのですか?他の人もそうは思わなかったのですか?
そこには、実際にモチベーションがありました。自分自身でも分解能を上げようという気持ちが当然あったわけですが、一番大きなモチベーションは、1986年、いわゆる「高温超伝導体」が発見されたことです。
「超伝導」とは、電子が電気抵抗0で流れるという非常に不思議な現象で、物理学でも大変難しいテーマの一つです。なぜ超伝導になるか?は、まだはっきりとはわかっていません。
高温超伝導が発見される前の「超伝導」は、マイナス270~マイナス260℃といった非常に低い温度、いわゆる「極低温(きょくていおん)」の世界でした。
それが「高温」の世界に、(と言っても、マイナス170~160℃くらいなので、僕らの住む世界ではそれでも低いのですが)、従来と比べれば100℃くらい、ぽーんと(超伝導になる温度が)上がってしまったのです。これは大変な発見です。
ひょっとしたら室温で超伝導になる物質が発見されるかもしれません。室温で超伝導になれば、例えば家庭への送電線など、全てのものが超伝導になるため、エネルギーロスが0になります。
現在は、山奥で発電して街まで送電線で送る際の送電ロスが約10%と言われていますから、それが完全にゼロになるわけですね。10%のエネルギー節約はたいへん大きくて、エネルギーの節約にも大きく貢献します。
物理学的にも、それまでは極低温でしか超伝導にならなかったものが、一気に100℃くらい上がったものですから、それはなぜかを調べようと、全世界の研究者が皆、高温超伝導にのめり込んだのです。それが今から25年くらい前のことですね。
その時、「超伝導になった電子を見たい」と皆が思ったわけです。思ったのですけど、直接、超伝導になる電子を見てその性質を調べることが、なかなかできませんでした。
超伝導になる電子を見てその性質を調べてやれば、なぜ超伝導になるかがわかります。それに、場合によっては、もっと高い温度で超伝導になる物質を探すことも可能になります。
ですから、超伝導電子を見ようという努力は、いろいろな研究分野で行われました。光電子分光の研究分野においても、光電子分光は電子を直接見る実験手段なので、一番大きな期待がかかったのです。
ところが、それまでの光電子分光の分解能では、とても超伝導の電子を見ることはできませんでした。しかし、「超伝導の電子を見るには、光電子分光しかない!」ということで、世界中の光電子分光の研究者が、分解能を上げる競争を行ったのです。
―それくらい「高温超伝導体」の発見はセンセーショナルな出来事だったのですね。
そうですね。いかに高温超伝導がすごいかと言いますと、私自身の話ですが、「高温超伝導、発見!」というニュースが耳に入った瞬間、私はそれまでの研究を全部やめて、「これからは高温超伝導だけで行く」と決意しました。
それはちょうど11月頃、修士論文や卒業論文の季節だったと思うのですが、研究室の学生を集めて「これまでの研究は全部やめる。これからは光電子分光の分解能を上げて、高温超伝導1本でやる」と宣言しました。なかなか学生さんも大変だったと思います。
―これまでの研究を急にやめることは、なかなか勇気のいることではありませんでしたか?
もともと超伝導には興味があったのですが、光電子分光では難しいかな、という気持ちがあったのです。理由は簡単で、それまでの超伝導は極低温でしか出なかったため、低い温度での光電子分光実験が難しかったのです。ところが、100℃くらい(超伝導になる)温度が上がってしまえば、測定が比較的容易になってきます。
なおかつ、超伝導になる温度が全く不連続的に、一気にぽーんと約100℃も上がってしまうことは、言ってみれば、物理学における大革命なんです。もう100年、200年に1回くらいしかない大革命なんです。これは素晴らしい、すごいことが起きた!それまでの研究に比べれば当然、やる価値が全然違っている、ということです。
ですから、何の躊躇もなく高温超伝導の方に乗り移りました。それくらい、世界中の研究者が高温超伝導を研究し始めたのです。今でも超伝導は続けていますから、あれから25年以上も研究を続けていることになります。
なぜ世界一の分解能を達成する装置はできたのか
―それだけ世界的に大きなインパクトがあるということは、それだけ競争が激しいということですね。
全くそのとおりですね。
―高橋さんの「光電子分光」の装置は世界一の分解能を誇り、ここにしかないものだから、世界中からサンプルが集まってくると聞きました。その競争の中で、どうやって世界一になったのですか?
今では確かに世界一の分解能を達成する装置を完成させることができましたが、当時はそこまで行っていませんでした。高温超伝導が発見されたばかりの約25年前の段階では、私の持つ装置は素晴らしくも何とも無く、世界中に何台もある装置の一つでした。
けれども、やはり「世界に先駆けて何としても装置を高分解能化し、世界のトップに行かなければいけない」と思ったものですから、寝る間も惜しんで実験を続けました。
測定できる場所があれば外国でも何処へでも行って実験しました。新しい高温超伝導体の試料も、私は専門家ではありませんでしたが、高温超伝導体の単結晶を自分で作ったりもしました。他人に頼む時間ももったいなかったものですから。
あの頃は、本当に忙しかったですね。それを数年間続けました。その過程で、研究費をあちこちに申請してお金を少しずつ工面して、高分解能装置の建設を続けて現在に至っています。
ですから現在の装置は1日にしてできたわけではなく、約25年の歴史を持っているのですよ。
―世界中の研究者も皆頑張った中で、なぜ高橋さんの装置が世界一になったのでしょう?
なぜ自分の装置が一番か?は、それは自分でもわからないと言った方が正しいですが、モチベーションだけは世界一強かったと自負しています。もう何が何でも装置の高分解能化を早くやらなければいけない。それだけが常に頭の中にありました。
それに、装置を高分解能化するためのいろいろな原理・原則があるわけですが、それ自体は非常に単純で、それほど難しいことではありませんでした。光電子分光の原理・原則に忠実に従って実験装置を設計して開発すれば、エネルギー分解能は出るものなのです。
ですから別に特別なマジックを使ったわけでも何でもなくて(笑)、非常に基本的な原理に忠実に従って装置をつくったということです。では他のグループはそれをやらなかったのか?については、単にスピードだけの問題かもしれません。
また原理・原則に従って装置をつくっても、その装置の精度が結構影響します。ですから同じ装置でも、ある人がつくれば高い分解能が出たり、ある人がつくれば出なかったり。そこも自分なりに手抜きをせずに(笑)やったと自分では思っています。
なぜ超伝導は起こるのか
◇高温超伝導を引き起こしている力は電子の「スピン」
―それでは、光電子分光という実験手段を用いて、高温超伝導の電子状態を調べた結果、どんなことがわかったのですか?
低温で超伝導になると、それまで1個ずつバラバラだった電子が突然ぱっと2個でペアを組む、いわゆる「超伝導ペア」になります。その超伝導ペアになった電子に、光を当ててやり、電子を物質の外に引っ張り出して、電子のいろいろな性質を調べるわけです。
まず一番最初に調べたのは、「超伝導ギャップ」というものです。超伝導になると、電子のエネルギー状態に電子が存在できない状態ができます。これを超伝導ギャップと言います。そのギャップの大きさを測ってやると、超伝導になっている理由がある程度わかります。それはエネルギー分解能を上げることで見えてくるので、エネルギー分解能を上げた装置で測定できたわけです。
そして、超伝導ペアの電子には、「対称性」という性質があります。超伝導電子には、丸とか四角とか、いろいろな対称性がありますが、すべての方向に対して区別のない、まん丸い対称性を「s対称性」と言います。sの他に、p、dといったいろんな対称性があります。
僕らが光電子分光で超伝導ペアの電子の対称性を調べてやると、「d対称性」であることがわかりました。dの対称性とは、四つ葉のクローバーのような対称性です。ある方向では超伝導が非常に強いけれども、それから45度傾いた方向では超伝導が弱くなるという対称性です。それが光電子分光でわかりました。
―超伝導ペアになった電子の対称性がわかると何がわかるのですか?
電子は超伝導になる力をどこかからもらってペアをつくるわけですが、対称性がわかれば、電子と電子をくっつける力は何かがわかります。
高温超伝導発見前までの超伝導体は、すべてs対称性でした。結晶の格子にある原子核の運動エネルギーをもらって電子が超伝導ペアをつくると、sの対称性になります。
ところが、今回の高温超伝導体は、「どうもs対称性ではないのでは?」と当初から言われていました。それを実際に光電子分光で調べてやると、dの対称性であることが明らかになったのです。超伝導を引き起こしている力が、結晶の格子ではなく、電子の持っている磁石の性質である「スピン」が関与してくると、dという対称性を持ちます。
つまり、光電子分光を用いて、高温超伝導を引き起こしている力が電子のスピンであることがわかってきました。ですから、スピンをうまく調整することができれば、もっと高い温度で超伝導になる物質ができるだろう、と実験的に明らかにしたわけです。
そのような研究を15年くらい、ずっとやってきました。その間、エネルギー分解能をどんどん上げながら進めてきました。
◇鉄系の超伝導も研究
―では、ここ10年の研究についてはいかがですか?
我々の光電子分光装置の分解能がだいぶ上がってきましたので、超伝導ギャップや超伝導の対称性なども、かなりはっきり見えるようになりました。
高温超伝導体の発見以降も、いろいろな超伝導体が発見されました。最近は、2008年に東工大の細野秀雄先生が発見された、鉄系の超伝導体について研究しています。
―鉄系の超伝導体は、どんなところがおもしろいのですか?
超伝導は普通、磁石(「磁性」と言います)とは敵対するもので、磁石があると超伝導が壊れてしまいます。鉄は磁石の代表みたいなものですね。それなのに鉄が入っているにもかかわらず、なぜ超伝導になるんだ?非常に不思議だ!それでいて超伝導になる温度が結構高いものですから、大きな注目を浴びたのです。
結論を言いますと、光電子分光で見た結果、鉄系の超伝導体では鉄の磁石の性質が消えていることがわかりました。その一方、超伝導になるメカニズムに関しては、鉄の持っている電子のスピンが関与しているのではないか、ということまで分かってきました。
―電子のスピンと言えば、先ほどの高温超伝導のお話とも似ていますね。
そうですね。高い温度での超伝導には、電子のスピンが関係している事を示しているのかもしれません。
最近は、超伝導からちょっと離れて、電子のスピンそのものに注目した研究を始めました。
世界最高の性能を誇るスピン分解光電子分光装置を開発
―なぜ最近は「電子のスピンに注目」しているのですか?スピンの説明も含めて、詳しくお願いします。
電子は、3つの基本的性質を持っています。まず、エネルギーと運動量。この2つについては、これまでの高分解能光電子分光装置で、かなり精度よく測定できました。そういった装置を使って、高温超伝導体や鉄系超伝導体を研究してきました。
電子にはもう一つ重要な性質があります。それがスピンです。簡単に言いますと、電子の磁石の性質です。電子はぐるぐると自転して回っていますから、地球が回ることで北極と南極ができるのと同じように、電子も磁石を持っています。電子の磁石は2種類しかなくて、上向きと下向きしかありません。
ですから電子の性質としては、エネルギーと運動量、そしてスピン、この3つです。この3つを決めてやれば、すべてが決まってしまうのです。ところが、これまでの光電子分光は、エネルギーと運動量まではかなり精度よく決めることができましたが、スピンは決まりませんでした。
私自身もずっとそれを考えていて、何とかスピンを測る光電子分光装置をつくれないかと、ここ7~8年くらい前から、スピンを検出する装置を光電子分光につけよう、と開発を進めてきました。
JST(独立行政法人科学技術振興機構)から研究費支援を受けて、スピンを検出できる光電子分光装置を立ち上げました。試行錯誤を繰り返して、完成まで5年ほどかかりました。
―電子のエネルギーと運動量の他に、スピンも決めてやれば、電子の性質はすべて決まるとのことですが、スピンに注目する理由は、他にもありますか?
なぜスピンか?というと、特に最近、いろいろな意味で、スピンを使ったデバイスや材料が注目され始めています。スピンは先ほどもお話した通り、上向きと下向きしかないので、0と1に使えます。そういう意味で未来のコンピュータに使えると期待されます。
普通の電子回路では、電子の流れ、つまり電流を利用して回路を動作させていますが、そのエネルギーはエレクトロンボルトであるに対して、スピンのエネルギーはミリエレクトロンボルトですから、エネルギーが2~3桁も小さくなります。すると、そこで消費されるエネルギーも格段に小さくなりますから、省エネルギーのデバイス素子に使えると、注目を浴びています。
ですから電子のスピンをちゃんと測って、電子のスピンが物質の中でどちらを向いているか?どっちの向きに流れているか?などを皆知りたいわけです。
それを見てやろうということで、スピン分解能のある光電子分光装置をつくりました。それが現在、東北大学片平キャンパス(WPI-AIMR)にある装置です。世界最高の分解能を達成している装置です。
―電子の性質を決めるエネルギー・運動量・スピンの3つすべてを決めることができるようになったことで、物質の性質にぐんと迫ることができるようになったわけですね。
そうです。今回我々が開発した装置は、電子の持つ基本的な3つの物理量である、エネルギー・運動量・スピンを全部決めることができます。
これから分解能はまだまだ向上させる必要がありますし、世界中に競争相手がたくさんいますが、現状に満足しないで、より高分解能な装置の建設を目指しています。
強力なモチベーションがなければ研究は飛躍しない
―これまで約25年間の研究開発の中で、一気にひらけた瞬間はありましたか?それとも、なだらかに積み上がった感覚でしたか?
なだらかではなかったと思います。例えば、装置の開発に関しては、意外と初期段階で上手くいったんじゃないかな、と思っています。先ほども少し触れたように、エネルギー分解能を上げるための基本的な原理は、教科書にちゃんと書いてあるのです。
―具体的には、どうやったのですか?
なるべくエネルギー分析器を大きくして、エネルギー分析器に入ってくる電子のスリット(孔)の大きさを小さくする。こうすれば原理的には分解能が上がります。それをそのまま信じて、その通りにやったんですね(笑)。最初は「こんなのでうまくいくのかな?」と思っていたのですが、これが結構うまくいったのです。
それは自分でも、ちょっと驚きました。それくらい簡単に分解能が上がった、というのもありますけど。逆に言えば、それまでの人は一体なんでこういうことに気づかなかったのだろう?と。
―なぜ他の人は気づかなかったのでしょうか?
他の人がやらなかった理由は分かりません。それだけの分解能は必要ないと思っていたのか。あるいは、もっと分解能を上げて、例えば「超伝導電子を見よう」という動機がなかったのか。
強いて言えば、大きな電子分析器を精度良くつくる技術が、以前はなかったのかもしれません。高精度の大きなエネルギー分析器をつくるには、その表面を非常に平坦に研磨する必要があるのですが、ちょうど私の頃に加工精度が上がってきて、要求通りのものができたのかもしれないですね。
私の場合、超伝導電子を見たい、そのためにはどうすればいいかを考えた結果、教科書通りの基本に立ち返って装置をつくった、ということです。
やはり、研究に対する強いモチベーションが、一番の駆動力じゃないでしょうか。「何が何でもわかりたい」「これがわからなければ研究は進まない」と思えば、それを測るためにはどうすればいいか?を真剣に考えます。逆に「今見えているもので十分だ」と満足すれば、装置の改良はしませんから。
何かをしなければいけないという研究上の強力なモチベーションがないと、研究はジャンプしないです。研究における発展というのは、そんなものだと思います。
宇宙の中で知っているのは僕だけかもしれない
―それでは、高橋さんの個人的なモチベーションは、どこからやってきたものだと思いますか?
それはなぜ研究者になろうと思ったか?にも関係しているかもしれません。僕たちは、ものごとに対して、「なぜ?」と常に考えますよね。例えば、超伝導体を見たときに、なぜ超伝導になっているのか?、それを何とかして解き明かしたい気持ちが湧いてきます。その辺じゃないかと思いますね。
―研究している雰囲気もそんな感じですか?
そうですね。私が大学院生の頃は、研究室にそれほど学生がいなかったので、一人で装置を作ったり実験をしていました。1年とか2年とかかけて装置を作りますが、作った装置が動作して実験データを出し始めた時が一番ワクワクドキドキしましたね。また、夜中に徹夜で実験をしていて、しーんとした実験室(実際は装置の音が結構うるさいのですが)で、実験結果がプロッターで出てくる。そこに今まで見たことのないスペクトルが出ることが、たまにあるのです。
今まで見たことのないスペクトル(間違っている可能性もないわけではないですが、そこは後で考えるとして)、ひょっとしたら、このスペクトル、世界中で知っているのは、僕だけだ!と思っちゃうわけです。そうすると、思わず大きな声で笑ったり、歌を歌いたくなってしまいます(笑)。
今までと何も変わらない結果が出た時は、そんなにワクワクしないですが、今まで見えていなかったものが見えていたり、今までとは全く違う結果が出た時は、やっぱり本当に飛び上がるくらい、嬉しいですよ。やった!と言う気持ちで、自然に笑い出してしまいます、夜中の実験室に響き渡るくらい(笑)。
自分の作った装置で、自分で測って、世界中の誰も知らないことを今、自分が一番最初に知っている。これは、なかなかすごいインパクトだと思います。もし自分がこれをやらなければ、世界中の誰も知ることがないかもしれないと。
そういう喜び(?)があるから、研究者は普段は地味で泥臭い実験装置作りなんかをやっているんだと思います。あまり目立たないですけども。でも本当に、何年かに一回かもしれませんけど、非常に誇らしい瞬間があるんじゃないですかね。ぽっ、とね。研究を続けてきたのは、そういう経験があったからだと思います。
―今まで、そのようなことは何回、どんな時にありましたか?
大学院生の頃は、1~2回あって、それで論文を書きました。もう一つは、高温超伝導の時ですね。
高温超伝導が発見された時、世界中の偉い理論家の先生たちが「これまでの超伝導と違って、超伝導ギャップが開くところにもともと電子はいない」と提案して、ほとんどの研究者がそれに従い、それが常識だと思われていました。けれども僕が光電子分光の実験をしたら、超伝導ギャップが開くところにちゃんと電子がいるんです。光電子分光で、高温超伝導になる電子を見つけたんです。
僕自身は、自分の実験結果が正しいと確信していたので、すぐに論文を書きました。それが、私が一番最初に書いた「Nature」(英国科学誌)で、一晩で書き上げました。
―それは、すごいインパクトだったのでは?
それは、ものすごいインパクトでした。Nature本社(ロンドン)が世界中にそのニュースを配信した途端、世界中の新聞社や日本のいろいろな国の大使館から、私のところへ問い合わせが来ました。私はたまたまその時、東京で会議をしていたのですが、会議中に新聞記者が来て、いろいろ聞かれたり、写真を取られたりして。驚きましたね、あの時は。
そういう経験を、研究室の学生さんたちにもしてもらいたいと思っています。君のやっていることは世界最先端の研究で、これをもし君がやらなければ、誰もやれないとね。
―一番ベースにある原動力は、人間のシンプルな欲求なのですね。
そうですね。子どもを見るとよく分かりますが、人間は、「なぜ?」と思うものに対してわかりたいと思う、非常に単純で基本的な欲求を持っていますよね。
わからないことを何とかわかりたいという欲求を、自分の中で熟成させて、それを物理学の分野で、高温超伝導をやったり、いろいろな研究をしているということかなと思います。
自分のやっていることは他の人は誰もやっていない、場合によっては自分しか知らなくて、今まさに自分がそれを解き明かそうとしているわけです。それがわかった時の喜びは、非常に大きいと思うのです。ドキドキワクワクするような気持ちです。
そういうものを解き明かしたことによって、人間の知的欲求に対する達成感のようなものが、人間には備わっていると思うんです。そうでなければ、なかなかこんなに難しい実験装置をつくって、なおかつ、それで一生懸命測るようなことはできないですね(笑)。
「何になれるか?」ではなく「何になりたいか?」
―今までのお話を踏まえて、中高生も含めた読者に、メッセージをお願いします。
自分のやりたいことは、そう簡単には諦めないことです。実は私、小学校の卒業文集に、「将来、研究者になりたい」と書いてしまったんですね(笑)。大学などに入っても、なれるかどうかわからない状態でしたが、今から思えば、紆余曲折しつつも、やっぱり研究者になりたい気持ちを諦めなかったんじゃないかな、と思っているのです。
中高生や大学に入学したばかりの若い人たちは、自分が将来どういったものになりたいか?を考える時、場合によっては、小学生の頃に思っていたことも、短い間では揺らぐかもしれない。しかし、それをいつまでも持ち続けていけば、いつか必ず実現するのではないかと私は思っています。
若い人たちを見て感じるのは、「自分は何になれるか?」と考えている人がたまにいるのですね。けれども、「何になれるか?」ではなく「何になりたいか?」ではないか、と思うのです。
「自分が何に向いているか」や「自分の能力はどういう方向に向いているか」と考えることもあるでしょう。それはそれで良いかもしれませんが、自分自身が何になりたいのか、自分自身の気持ちをはっきりと持つことが大切と思っています。
文章を書くことと実験から新しい発見を導くことは同じ
また、中高生には本をたくさん読んでもらいたいですね。本と言っても、しっかりとした文章で書かれた本です。きちんと論理的にものごとを考えて書いてある文章を何回も読んでいると、ものごとを論理的に考える習慣がつきます。私自身は、理系・文系問わず、いわゆる国語が一番重要だと思っています。要するに、文章力ですね。それをしっかりと身につけるべきだと思っています。
理系・文系問わず、ものごとを論理的に考えて、人に説明する時は、自分の頭の中で文章を組み立てますね。その時に、いろいろな本を読んで、論理的な思考回路を学習していると、人に伝える時もわかりやすい説明になります。それは大人になっても、いろいろな場面で、とても大事なことです。
まさにそれはサイエンスも同じなのです。実験をして、いろいろある実験データの中から、それを論理的に組み立てて、そこからいろいろな結論を引き出し、新しい発見を導くことは、文章を書くことと全く同じ論理回路になっていると思います。文章も同じで、単語がたくさんあって、それを論理的に組み合わせてつなぎ合わせ、相手に説明した時に、それが伝わるということですから。
そのような意味で、相手に正しく理解してもらえる、論理的な説明や文章を書く力を付ける。そのためには、文学にしても評論にしても、しっかりとした著者の文章を読んでおくことが大切だと思います。
―高橋さん、本日はありがとうございました。
「お気に入りの場所の前で撮りましょう」との提案に「本が好きなので、では本の前で」と高橋さん。「本を読むことが大好きで本を沢山読んでいます。評論や歴史的なものも。それが結構おもしろくて、役立っていますね」とお話されていました。
学生インタビュー(東北大学理学研究科物理学専攻 光電子固体物性研究室)
装置開発から測定まで
―まずは、それぞれの研究についてご紹介ください。
高山あかりさん(博士課程後期3年):
高橋研究室は、いろいろな物質の中の電子を見るという研究室です。電子の何を見るかというと、電子がどの方向に動いているか(これを「運動量」と言います)、どれくらいのエネルギーを持っているか。それに加えて、スピン(自転の向き)、この3つを電子は持っています。
これまで高橋研究室では、エネルギーと運動量に関しては、世界最高レベルの装置を持ち、たくさんの結果を出してきました。けれどもスピンは検出するのが難しかったため、スピンを高分解能で観測できる装置をつくろうと、私もその建設にずっと携わって、今年で5年目になりました。ようやく建設した装置が世界1位の性能を出すようになって、現在はその装置を使って、スピンを示す性質をいろいろ測っています。
田中祐輔さん(博士課程前期2年):
僕の実験は、エネルギーと運動量を測定できる、角度分解光電子分光装置を使って、新機能性物質である「トポロジカル絶縁体」という物質について研究しています。そもそもトポロジカル絶縁体とは、とにかくスピン偏極している物質でして...難しいですか?
―ではトポロジカル絶縁体から説明をお願いします。
高山さん:
数年前、トポロジカル絶縁体という新しい物質が見つかりました。普通の結晶で考えたとき、「トポロジカル絶縁体」は基本的には絶縁体です。プラスチックや木などといったものと一緒の扱いですね。けれども、中身は絶縁体なのですが、一番外側の表面のところだけ金属の働きをするんです。一つの物質なのに、金属と絶縁体の両方が存在しているという不思議な物質です。
それに加えて、金属の性質を示す表面では、スピンの向きも特殊です。普通の金属では、スピンは360度ぐるぐるまわって、自由な方向に向いていますが、トポロジカル絶縁体の場合、スピンがある一定の方向しか持てないという、変わった性質があります。
田中くん:
僕が今研究している物質は、トポロジカル絶縁体の絶縁体部分が超伝導を示す「トポロジカル超伝導体」です。トポロジカル超伝導体は、中身が絶縁体ではなく超伝導体で、表面に金属的な状態があるという、これまでにないすごく特殊な状態です。
高山さん:
イメージ的には揚げ豆腐かな。中身の豆腐が絶縁体、もしくは田中くんが最先端でやっている超伝導体。まわりの衣の部分が金属。あんなイメージです。
田中さん:
まさに、揚げ豆腐な感じです。そもそも「トポロジカル超伝導体」という物質自体、理論的にはあると予測されていますが、まだ見つかっていないので、それを発見すること自体に意義があると思っています。
世界最先端で戦うこと
―次に、研究生活の中で、特に印象に残っていることは何ですか?
高山さん:
一番は、世界最高分解能の装置ができた瞬間です。高橋研究室に来て1年くらいの時に、一番良い分解能が出た瞬間が、やっぱり一番インパクトが大きかったですね。
それから、私の場合は自分で試料をつくってから装置で測るので、その試料の出来具合です。ちょうど昨日も失敗して、今朝できたものを「やったー!」と思って測ったら、違うものができていたので残念でした。
やっては駄目を繰り返して、試行錯誤して良い試料ができる。なおかつそれを分解能の良い装置で測って、すごく綺麗なデータが出た時、やってよかったなと思います。がっかりも多いですけどね。今回もいっぱい失敗しました(笑)
―そんな中、研究で心がけていることは何ですか?
他の人より高品質な試料をつくりたい、という気持ちが一番あります。そして、効率良くやることを心がけて頑張っています。世界中で同じような物質を研究している競争社会なので、あまりゆっくりやっていると、競争に負けてしまうこともあるからです。
同じことを研究して、同じ結果が出た他のグループに、先に成果を出されてしまうと、私が1年くらいかけた研究が全て無駄になるので、それは悲しいですよね。
ですから、着目点が大切だと思います。他のグループではあまりやらないけど、おもしろくて、なおかつ試料をつくるのが難しいものを、できるだけ早くつくれるようになりたいと思っています。
田中さん:
自分は、学部卒業研究の時に、「鉄系超伝導体」という鉄を使った超伝導の研究をさせてもらいました。鉄系超伝導体が、なぜ超伝導になるのか?そのメカニズムを知るためには、超伝導ギャップというものを測る必要がありました。
それを測るためには、私たちの研究室にあるような世界最高水準のエネルギー分解能を持つ装置でなければ測れません。超伝導状態の試料の超伝導ギャップを測ることに成功したときに、やっぱり世界最高の装置があるのは凄いことだ!と実感しました。
―そのような世界最先端に立つ気持ちは、どんな気持ちですか?
高山さん:
普段はあまり最先端という実感はないのですが、高橋先生はじめスタッフの人たちが、世界第一線で活躍している人たちなので、そのような研究者を間近で見て、一緒に実験することで、「良い結果を出すためには何が必要で、どんな手順を踏んで、こういうことが見たい」というモチベーションで実験することが最先端の研究には重要だと教えられました。
手取り足取り全てのことをスタッフから教えてもらっていることが、一番良い勉強になっていますね。
田中さん:
世界最高の装置なので、とにかく自分が壊さないように(笑)...常に気をつけています。やっぱり壊してしまうと、数日間、作業が遅れてしまうので。世界で過酷な競争が行われているので慎重に作業しています。
高山さん:
壊したことで覚えることもあるから、それも大事だと私は思うけどね。私の最近の仕事は、装置修理が多いんですよ(笑)。でも、自分達で装置を組立てているから、何かトラブルが起きたとしても、自分達で対処できるんです。外から買ってきただけの装置では、自分達で直せないとか、どうしようもない、となるんですけどね。
物理に対するシビアさ
―では研究室の雰囲気について伺います。一言でこの高橋研究室をあらわすと?
高山さん:
団結力が強いと思います。大きなプロジェクトが走って、「これはどうしても絶対に測らなければいけない」となった時は、研究室総出で測るのですが、その時の団結力がすごく強いと思いますね。例えば、鉄系超伝導やトポロジカル絶縁体といった流行物質があらわれた時、それを測る時の団結力は怖いくらいです(笑)
田中さん:
新しい物質が現れると、それにむかって、がんと集中しますよね。
高山さん:
新しい物質が(世界最高水準の装置を求めて)来る確率が高いからね、うちの研究室は。
田中さん:
僕は、とてもあたたかみのある研究室だと思います。例えば、何か興味があることや質問したいことがあると、助教の相馬さんや准教授の佐藤さんのところに気軽に訪ねて、1を聞けば10を答えてくれます。そういう雰囲気を僕は気に入っていますね。
―では、高橋先生はどんな先生だと思いますか?
田中さん・高山さん:
それは難しい質問ですね(笑)。厳しい方だと思います。
―どのようなところが厳しいのですか?
高山さん:
研究に対して、すごく厳しいです。単に「実験をやってみたい」だけでなく、「こういう結果が出そうだから、やってみたい」と見通してから実験をしなければ駄目なんです。
田中さん:
実験屋さんとして、物理的描像をすごく大切にされると、一番最初に思いました。「式でこうなるからこうなる」みたいな理解では駄目で、「そこにこういう物理があるから、こうなる」という説明を、いつも求められる気がします。学会発表や卒論発表などで適当な答えをすると、そのたびに修正されて、すごく厳しい方だと思います。
―学生さんにもお話を伺えて良かったと思います。先ほど、高橋先生にもインタビューさせていただいたのですが、皆さんからお話いただいた「厳しい」側面より、むしろ「なぜ?を解き明かしたい」という知的好奇心でずっとやってきたとお話されていました。「物理に対する厳しさ」はそこから生まれる結果でしょうが、まわりから見るとそれがシビアさとして映るのですね。それを学生さんの立場からお話していただけて、良かったと思います。
高山さん・田中さん:
それは、良かったです(笑)
後輩へのメッセージ
―最後に、今までのお話を踏まえて、中高生も含めた読者にメッセージをお願いします。ご自身が大切だと思うことを、メッセージにかえてください。
高山さん:
高橋先生も仰るように、「なぜ?」と思う気持ちが大切だと思っています。最近読んだ本によると、理系の人は、何か不思議に思ったことを自分で調べ始める存在なのだそうです。「へ~」と思うだけで終わらず、「なぜ?」というところまで自分で調べるそうですよ。
文系・理系に限らず、普通に生活していると、不思議なことはいっぱいあると思います。ですから「不思議だな」と思ったところで「まぁ、いいか」じゃなく、そこから先に一歩進むだけで、たぶん見え方が変わるのかなぁ、と自分の生活を通して思います。
それから、高橋先生は「見通しを持ってやれ」と仰っていますが、時には「まずやってみる」のも大事かな、と。私はどちらかと言うと、見切り発車型なので(笑)。思わぬ発見があるかもしれないので、時には冒険も大切!と思って勉強や部活を頑張ってください。
田中さん:
中高生にメッセージを言える身分ではとてもないですけど(笑)。中高生と言えば、受験などがあるでしょうね。その中で、苦手科目や興味のない分野もあると思います。けれども「興味ない」と言った瞬間、そこで全ての思考が止まってしまいます。
ですから「興味ない」という発想は捨てて、「全て吸収してやるぞ!」という意欲的な姿勢でもって、興味の芽はつまないでほしいですね。それが今度は、例えば自分の得意科目など、どこかでつながるかもしれないし、新しい世界が拓けると思います。
―高山さん、田中さん、本日はありがとうございました。