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【東北大学ALicE×宮城の新聞 ♯010】東北大で工学系イクメン座談会、男性目線で育児を語り合う(前編)

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【東北大学ALicE×宮城の新聞 ♯010】東北大で工学系イクメン座談会、男性目線で育児を語り合う
取材・写真・文/大草芳江

2014年12月26日公開

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【写真】11月20日に開催された「育児期の男性研究者座談会-青葉山のイクメンたち-」のようす=東北大学青葉山キャンパスBoook

 「育児期の男性研究者座談会-青葉山のイクメンたち-」と題した座談会が11月20日、東北大学青葉山キャンパスのカフェ「Boook」にて開催された。育児期の工学系男性研究者8人が参加し、自身の育児への関わり方やワーク・ライフ・バランスなどについて、ざっくばらんに語り合った。

 女性研究者や女子学生の支援や男女共同参画の推進を行う「東北大学工学系女性研究者育成支援推進室(アリス)」の主催。女性だけでなく男性の視点をこれからの育児支援制度に反映しようと企画した。

 アリス室長の田中真美教授は「男性研究者による育児参加の現状は、大学内でもあまりよく知られていない。普段の育児のようすや、男性目線で必要な支援など要望があれば、ぜひ話して欲しい」と挨拶。

 続いて、参加者による自己紹介の後、それぞれ育児参加の状況が語られた。また、希望する育児支援として、ネット会議や学会保育などがあげられた。参加した男性研究者たちは「育児は苦労も多いが、日々の喜びがある」「育児の経験が、学生の教育にも活かされた」などと語っていた。主なやりとりは、以下のとおり(敬称略)。


■参加者の自己紹介

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森口周二(災害科学国際研究所 准教授)
1児(女1歳)の父。
妻は、専業主婦です。研究は、土砂災害のシミュレーションや調査をしています。
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大野和則(情報科学研究科 未来科学技術共同研究センター 准教授)
1児(男2歳)の父。
妻は、東北大学の生物系の研究室で働いています。子どもは、東北大学川内けやき保育園に預けています。研究テーマは、レスキューロボです。
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住井英二郎(情報科学研究科 教授)
2児(男小3、男6歳)の父。
妻は、東北大学の別のキャンパスで働いています。研究分野は、理論計算機科学です。
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藤井啓道(工学研究科 材料システム工学専攻 助教)
2児(男3歳、男0歳2ヶ月)の父。
妻は、専業主婦です。下の子が生まれたばかりで、てんやわんやです。
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上田恭介(工学研究科 マテリアル開発系 助教)
2児(男3歳、女0歳4ヶ月)の父。
妻は自営業(旅館経営)で比較的自由度が高いため、今は妻にいろいろお願いして何とかまわっている状態です。研究テーマは生体材料で、人体に使われる金属やセラミックなどの研究をしています。
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山川優樹(工学研究科 土木工学専攻 准教授)
3児(女小5、男小2、女0歳2ヶ月)の父。
2ヶ月前に3人目の子どもが生まれ、育児を再開しました。妻は、助産師の仕事をしています。今は、妻が育休中のため少し落ち着いていますが、彼女が職場復帰し、子どもが保育園に入る頃になると、また時間のやりくりが大変になる毎日です。
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伊野浩介(環境科学研究科 助教)
1児(女3歳)の父。
妻は専業主婦です。僕も妻も愛知県出身で、どちらの両親からも離れたところで子育てをしています。
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奥山武志(工学研究科 バイオロボティクス専攻 助教)
2児(女小1、女4歳)の父。
妻は医師で、病院に勤務しています。近所に住む妻の両親のサポートを受けながら育児をしています。人の動きや感覚を計測する研究をしています。

■工学系イクメンの一日

―皆さんは普段、どんな家事や育児をしていますか?

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森口
皿洗いや子どもの夜泣きを静めるのが、今の私の役割です。昼は妻が子どもの面倒を見てくれているので、夜はできるだけ私があやし、土日は家族一緒の時間をつくろうと心がけています。

大野
僕の担当は、お風呂と遊び相手です。平日は帰宅後に子どもをお風呂に入れ、土日は一緒に遊びに行きます。子どもが生まれてからは、1日のスケジュールも変わりました。以前は20時や21時から打合せを始めることもありましたが、今はそういったことは避けています。また、子どもと一緒に22時には寝るので、早い時には朝3時、遅くとも大体5時には目が覚めるように。僕も昔は夜型でしたが、今は朝型というか、明け型になりましたね(笑)。早朝にメールの仕事をして、家でゆっくり朝ご飯を食べて朝9時半頃には大学に出勤する感じです。

住井
私の専門は理論計算機科学で、ノートパソコンさえあればどこでも仕事ができるので、裁量労働制ということもあって勤務時間も子どもに合わせて少し不規則です。朝は幼稚園に子どもを送り出した後、大学に出勤します。妻が仕事の都合で幼稚園のお迎えに間に合わない場合、15時半頃に一度帰宅して子どもを迎えに行き、習い事へ送っていきます。そこから17~18時頃に再び大学に戻って、夜間まで仕事をしています。

藤井
二人目の子が生まれた時、私も1週間の育児休業を取得し、その間はほぼ全ての家事を担当しました。今は基本的に、平日は子どもをお風呂に入れるのと掃除くらいです。休日は、料理と一週間分の食料の買い出し、上の子を公園に連れて行くのが僕の担当です。

上田
平日は奥さんに100%任せ、私は上の子を幼稚園に送るくらい。逆に、土日は妻が仕事があるため、私が面倒をみます。最近二人目の子が生まれ、「下の子ができると上の子が嫉妬するので、きちんと上の子も構わなければいけない」と聞いたため、私は主に上の子を担当し、遊ぶようにしています。そんな感じで、分業しています。

山川
 三人目の子どもが2ヶ月前に生まれ、今は妻が育休を取得中のため、育児と家事は任せている部分が多いです。それでも三人目の子どもをお風呂に入れたり、休日には私が子どもたちの面倒を見て、平日なかなか外出できない妻が外出できるように気遣っています。妻の仕事(助産師)は勤務時間が不規則で、週1~2回の夜勤や突然の呼出しもあります。育児に限らず、家事を夫婦半々で分担しなければ家がまわりません。上の子どもたち(小5と小2)が幼い頃、妻が夜勤の時には私が早めに仕事を切り上げて保育園へ子どもを迎えに行き、夕食をつくってお風呂に入れ寝かしつける。そして翌朝、帰宅した妻とバトンタッチで大学へ出勤するというサイクルでした。三人目の子が保育園に行くようになったら、再びそんなサイクルになるでしょう。

伊野
普段の家事は子どもをお風呂に入れたり寝かしつけたり、食器洗いなどをやっています。22時には家族みんな一緒に寝て、僕だけ朝早く起きて出勤する感じです。

奥山
妻は医師で、私とほぼ同様の勤務体系のため、家事はフェアにしています。特に役割は決めず、気づいたほうが行うというやり方です。子どものことで急に帰らなければいけない時など、妻は診察の都合などでなかなか帰宅できないですが、私の上司が理解のある方で、私が帰宅することもあります。


■苦労や引け目も

―仕事と育児の両立で、ご苦労などはありますか?

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上田
出張に行くのが大変です。出張中は家をあけることになるので、妻をどう説得するかですね。

伊野
確かに、妻との会話は大事ですよね(笑)。僕が米国に3ヶ月間留学した時も、妻と「その間は育児や家事をどうする」となりました。結局、妻は愛知の実家に帰りましたが、逆に1週間くらいの短さだと、実家に帰るか、それとも仙台で頑張るか、悩みます。

住井
海外出張は、本当に大変ですよね。私の専門(計算機科学)は雑誌への論文投稿より国際会議での口頭発表が大事な分野なのですが、関連する国際会議に全部出席していたら、月に1週間は海外出張になってしまうため、今は招待講演も半分くらい断っています。また、東日本大震災発生時に海外出張中で大変だったこともあり、出張で家を留守にするのが不安です。さらに以前には、私が海外出張に出発する当日に妻が食中毒になってしまい、他に育児を頼める人もいなかったため、やむを得ず出張をキャンセルしました。しかし大学の規定ではキャンセルが認められるのは「本人の病気等」とあり、家族の病気は対象外とのことで,その際のキャンセル料は自分で支払いました。これは何とかならなかったのかと思います。

大野
僕の場合、保育園に預けられることもあり、長期の出張も気にせず行っていましたね。普通の保育園は、18時を超えると延長保育になるそうですが、僕が預けている東北大学川内けやき保育園の基本保育は19時まで。「東京で講演して仙台に帰ると19時はギリギリだから、20時まで保育してくれるといいな」なんて僕はワガママ思っていたのですが、それを周囲に言ったら、「え?!19時まで預かってくれるなんて良いじゃない」と言われ、保育園の開所時間は大事だなと思いました。

-大野先生、逆に奥さんから「1週間、海外出張に行くから、よろしくね」と言われたら?

大野
いやぁ、楽しみなんですけどね(笑)。普段は僕がお風呂に入れても、最後には必ず「お母さんー!」と母親の方に行ってしまうじゃないですか。お母さんという頼れる存在がいなくなったら、もうこちらに頼るしかないだろうと(笑)。

伊野
わかります。俺が寝かしつけたのに、朝起きると子どもは妻の布団に移動している...。あれは何なんですかね(笑)。

―身近な研究室のボスや学生たちに、理解してもらいたいことはありますか?

奥山
周囲の先生方の理解もあり、基本的には大丈夫ですが、まだ負い目はある気がしますね。例えば子どもの用事で仕事を中断して帰宅する際に「男として、仕事と家庭どっちが大事なんだ?」と変な葛藤が起こることもあります。自分の中に、古い考えがまだ少し残っているのかもしれません。

大野
大きなプロジェクトの会議など学外から関係者が集まるような会議は途中で抜けられませんが、研究室の会議なら「もう19時半だから終わりにするよ」と終了しちゃいますね。学生たちもわかっているので。

住井
まわりの理解がある人でなければ、この座談会に参加するのも難しいでしょう。私も准教授だった頃に上司だった教授をはじめ、周囲の方からは理解をいただいています。けれども今年5月から私自身が教授になり、15時半頃に幼稚園へ子どもを迎えに行くとなると、その時間はゼミなどのスケジュールが組めなくなる。その分、学生さんには負い目があります。

上田
研究者は裁量労働制で、自由に時間を使える一方で、勤務時間が明確に決まっていないですよね。住井先生のように午後に一時帰宅する分、夜間に仕事時間を確保すればOKという一方で、明確な勤務時間が決まっていないため、早く帰宅することに負い目を感じてしまいます。

大野
それが功を奏して、朝型にシフトできるかもしれないですよね。良い面もあります。


■育児中にあったら良い仕組み

―アリスや全学でもベビーシッター利用料補助制度や病後児保育室(星の子ルーム)などの育児両立支援がありますが、他にもあったらいいと思うサポートはありますか?


◆学会保育

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大野
ベビーシッター利用料補助制度はすごく良いですよね。うちの妻も利用していますよ。この制度を知ってから気が付くようになったのですが、工学系の学会には学会参加者の子どもを会場で預かる学会保育を行っているところがあまりないんですよ。

奥山
機械学会の学術講演会では学会保育が行われていて、私も今年初めて利用しました。ただ、利用者は少ないですね。

大野
そうなんですよ。おそらく利用者が少ないから、議題にあがっても「採算が合わないし、やめよう」となる傾向にあると思うのです。もちろん主催者側として難しいところがあると思いますが、学会としても保育のサポートができれば、工学系研究者、特に女性研究者が助かると思います。先日も、学会会場に子どもを連れて来て、発表中は誰かに預けて、自分の発表が終わったらすぐに帰っていく女性研究者の方を見て、大変だと思って...。日中の学会そのものには出席しても,保育園の開所時間などの事情で夜の懇親会には出ない女性研究者の方も多いです。

上田
私が所属する学会は、会員の約半分が企業に所属している人で女性が多く、女性の会の活動も活発で、学会保育もしっかりしています。工学系では相対的に女性の数が少ないため(東北大学の場合、工学系の女性研究者は、助教以上で全体の約4%)、学会等でも「保育が必要」などと強く言えないのかもしれないですね。


◆研究者夫婦で同居できる仕組み

奥山
結婚した当時、私は東京の研究所にいて、妻は九州で勤めていたので、結婚後もしばらくは離れて生活をしていました。子どもが生まれ、かつ妻が仙台で就職することになった時にせっかく子どもが生まれたので一緒にいたいと思い、私も仙台で職を見つけ、同居することにしました。

住井
女性研究者の方で夫婦別居の方が多いように(東北大学の工学系女性研究者のうち16人中11人が夫婦別居で育児中)、大学の研究職として夫婦揃って同じ都市に住むのは日本では難しいと思います。私たち夫婦も子どもが生まれる前は米国に住んでいましたが、柄が悪い土地だったこともあり子どもを持つ前に家族で日本に戻ってきました。そこでもし「このまま米国で研究を続けたい」と私が主張していたら、今頃は別居か、ひょっとしたら...。研究者は物理的にどこで働くかが大変難しいですね。


上田
もう一つ気になるのが特に若手の研究職における任期制についてです。数年の任期が終わるまでの間に、次の職を探さなければいけません。私は学生の頃からずっと東北大におりますが、どこか他の土地に異動するとなったら、家族をどうするかは常に問題として感じています。それも女性研究者を少なくする原因の一つになってはいないでしょうか。

住井
一つの大学だけではできないことですが、例えば国立大学全体として一括したポストを用意し、育児や介護などの都合で異動が難しい場合には各大学間でポストをやり取りすることで物理的に移動しなくても済むような制度が整備されると良いと思います。実際にフランスでは、多くの高等教育・研究機関が国立だということもありますが、ある大学で採用されても、育児などの都合で物理的に移動できない場合は、近隣の違う大学に勤務することも可能らしいのです。そこまでいけば本当に理想的だと思います。


◆ネット会議

住井
育児で少し研究のペースがダウンしていたので、育児が一段落した今からバリバリと研究に復帰しなければ、研究の第一線から退いてしまう恐れがあると、少し心配しているところです。子どもが生まれる前なら3日徹夜してでも締切に間に合わせたことが、今は体力面もありますが、そもそも3日間集中する時間がとれません。そういう時間のやり繰りをしている状況なので、参加している日本学術会議の委員会においてネット会議が正式に認められたのは助かります。会議のたびに出席者が地方から東京に集まるのも大変ですし、ぜひ他の会議にも広がって欲しいですね。大学の教授会もネット会議を認めていただきたいくらいです。

大野
論文などの締切前だと移動時間中に作業ができるので嬉しいのですが(笑)、確かに移動そのものが負担となりますよね。うちのボスも最近は、「東京での会議が週3回あると、さすがに疲れるね」と言うようになりました。ネット会議などの導入は女性だけでなく、男性にとっても良いと思います。

後編へ続く...


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