(9)解けない謎は胸の蔵に
子供の時から謎をため込んで来た。並べて見る。なぜ自分は村祭りに出られないのか?なぜ川に突き刺した竹竿は首を振るのか?なぜ羽黒トンボだけが羽をたたんで休むのか?猫は目が回っても立てるのか?蛇は感電したらどうなるのか?なぜなまずの腹は白くやわらかいのか?
村祭りの花は、獅子に立ち向かう武者姿の少年だった。しかし私の出番は全くなかった。父に訊くと「うちは小作(田畑を持たない貧農)だからだ」と言った。哀しかった。なぜ親の貧富で子供を差別するのか。竹竿の問題は大学で、カルマン渦が原因と知った。猫は抱いて実験した。ある回転数を超えると、猫はぶざまに落ちた。蛇も実験した。カエルと正反対、折りたたまれた。羽黒トンボとなまずの問題は今もお蔵入りのまま。
ひのき進学教室特別講師
南部 健一 (東北大学名誉教授、2008年紫綬褒章受章)
南部 健一 (東北大学名誉教授、2008年紫綬褒章受章)
なんぶ・けんいち
1943年金沢市生まれ。工学博士、東北大学名誉教授。百年余学界の難問と言われたボルツマン方程式の解法を1980年、世界で初めて発見。流体工学研究に関する功績が認められ、2008年紫綬褒章受章。
1943年金沢市生まれ。工学博士、東北大学名誉教授。百年余学界の難問と言われたボルツマン方程式の解法を1980年、世界で初めて発見。流体工学研究に関する功績が認められ、2008年紫綬褒章受章。