日本アンドロイドの会、ICTによる復興支援イベントを10月に仙台で開催
2012年8月29日公開
情報通信技術(ICT)を活用して震災復興を支援しようと、「ICT ERA + ABC 2012 東北」が10月20日、東北大学川内萩ホール(仙台市)で開催される。グーグルの携帯電話むけ基本ソフト(OS)「アンドロイド」の普及啓蒙を目指す「日本アンドロイドの会」の主催。同会が半年に1度開催するイベント「Android Bazaar and Conference(ABC)」の拡大版で、首都圏以外では初の開催となる。
「ICT ERA + ABC 2012 東北」プレイベントのようす=8月27日、仙台国際センター
◆8月27日に仙台でプレイベント開催
開催に先立ち、プレイベントが27日、仙台国際センター(仙台市)で開かれた。プレイベントでは、まず同会の丸山不二夫会長が「ICTの力で震災復興し、新しい時代を拓こう。また、全国のIT技術者に被災地の現状を知ってもらう場にしたい」と挨拶。「ICTの新しい時代の担い手である、若い世代にもぜひ多く参加してもらいたい」と呼びかけた。
グーグル日本法人元社長・前名誉会長の村上憲郎さんによる記念講演
◆グーグル日本法人元社長の村上さん記念講演
続いて、グーグル日本法人元社長・前名誉会長の村上憲郎さんによる記念講演「ICTで切り拓こう新生スマートニッポン」があった。村上さんは「現在、電力網に接続している物はすべて、将来インターネットに接続される。インターネットは人と人だけでなく、人と物、物と物とのコミュニケーションツールになる」と、インターネットの最前線として「Internet of Things(物)」の側面を強調。国内外の事例や課題を紹介し「日本は遅れを取ることのない一層の努力が必要。日本の若い世代のアイディアを期待する」と話した。
アンドロイドの会・会長の丸山不二夫さんによる講演
◆グーグルの新しい検索技術を紹介
次いで行われたプレセミナーでは、丸山会長が「グーグルの新しい検索技術--KnowledgeGraphについて」と題して講演。グーグルの新しい検索技術と課題を解説しながら「人間の言葉を、単なる文字列ではなく、意味として機械に理解してもらいたい。そんな欲求が高まって今、イノベーションが起こりつつある」と、検索技術に大きな変化が起きていることを紹介した。
東日本大震災復興支援活動「ITで日本を元気に!」について講演する佐々木賢一さん
◆地元IT企業らによる震災復興支援活動
また、地元IT企業の経営者らによる東日本大震災復興支援活動「ITで日本を元気に!」を紹介する講演が佐々木賢一さん(トライポッドワークス社長)からあった。佐々木さんは被災経験から感じたITの課題や、PC提供やSNSミニ講習会など被災者のニーズに合わせた支援活動を紹介。「IT企業が力を発揮できることはまだまだある。復興は長く続くので地道に活動を続けたい」と話していた。
「ICT ERA + ABC 2012 東北」は、IT業界の社会人に限らず、学生の参加も歓迎している。参加は無料。9月には、学生向けのプレイベントも仙台市内で開催される予定。くわしくは「ICT ERA + ABC 2012 東北」のホームページを。
インタビュー(中高生の読者へメッセージ)
◆理科や物理の勉強はこれから生きる上で大事
/丸山不二夫さん(日本アンドロイドの会・会長)
―そもそもアンドロイドの会とは?
丸山不二夫さん(日本アンドロイドの会・会長)
日本アンドロイドの会は、「アンドロイド」というスマートフォンのデバイスを日本で普及させようと、自主的・自発的に集まった人たちの集まり。監督者は誰もいない、自分たちで自律的に組織を維持する集まりを「コミュニティ」と言う。そういった人達が全国に約2万人いて、30以上の支部がある。非常に活発に活動しているコミュニティ。
あとは「オープンソース」と言って、皆が情報を共有しようというムーブメントの一つでもある。オープンソースとは、例えば数学なら、公理や定理は証明したら、誰も「自分のものだ」とは言わないね。数学は昔から、オープンソース。物理も同じで、物理法則も発見したら名誉になるけど、お金に直接はならないわけ。そういう風に情報を共有しようという流れが、オープンソース。
つまり、日本アンドロイドの会は、オープンソースの情報共有をベースにした、自主的・自律的なコミュニティという特徴がある。ちょっと難しいかもしれないけど、そういうものもあるんだ、と覚えてもらえたら。そのオープンソースで携帯をつくろうとしたのがアンドロイド。要するにキーワードは、オープンなコミュニティが支える、デバイスだということ。
―では講演内容をふまえて、中高生を含めた読者にメッセージを。
今、受験や学校の勉強で、悩むことや意味がわからないこともあるかもしれない。でも、ずっと勉強することは大事なこと。今は、その意味がわからなくても必ずわかるし、今の中でも、好きになればわかることは、たくさんあるはずだと僕は思っている。
そういう意味では、むしろ理科や数学の勉強は、これから生きていく上でも大事だと思って欲しい。数学や物理は、これからの社会や人間を理解する上でも非常に大事なことだし、そこを避けては、わからないことが、むしろ広がるだけだと思う。科学的・合理的に自分の力を拡大して解決する世界観をきちんと持って欲しい。
日本では、数学や物理が良くできる子を皆よってたかって医者にする。でも、そういう日本の社会は間違っていると僕は思っている。それは受験対策や進路とかは全然関係なしに、それ自身でおもしろいし、それ自身で意味があると思ってもらえたら嬉しい。ぜひ、ちゃんと数学や物理を勉強してください。
◆「Internet of Things」時代で活躍する人間に
/村上憲郎さん(グーグル日本法人元社長・前名誉会長)
村上憲郎さん(グーグル日本法人元社長・前名誉会長)
中高生の皆さんも、インターネットはすでに使っていると思う。これからは、人と人のインターネットだけでなく、人と物、物と物とが通信し合うインターネットの時代が始まる。その次代はもう君たち中高生の時代。今からでも十分間に合うので、インターネットの世界をもっと勉強して。そして「Internet of Things」時代に活躍する人間に、君たちの何人かがなってくれたらありがたい。
◆困った人たちを助けられるICTを一緒につくろう
/佐々木賢一さん(トライポッドワークス代表取締役社長)
佐々木賢一さん(トライポッドワークス代表取締役社長)
東日本大震災では、残念ながら、ICTが役立たなかった点もあった。でも逆に言えば、ICTは何ができなかったのかがはっきりした。次はICTが役立てるよう、皆さんもいろいろ勉強して、災害で困った人たちを助けられるICTをぜひつくってもらいたい。震災の復興は未来をつくること。中高生の皆さんが成長した時、幸せな暮らしができる東北にむけて、大人も子どもも一致団結して頑張ろう。