取材・写真・文/大草芳江
2017年07月13日公開
女子学生のためのミニフォーラム「工学にかける私の夢」が7月25日、26日の両日、東北大学工学部オープンキャンパスで開催される。これに先立ち6月に開かれた事前座談会で、東北大学工学系女性研究者育成支援推進室(ALicE)副室長の松八重一代教授と、同フォーラム登壇予定の現役女子学生5人が、ざっくばらんに本音を語り合った。
工学を選んだ理由
松八重 工学部を選んだ理由は?
大足 正直に言うと、高校生の時は「工学部に行きたい」とか将来やりたいことが決まっていたわけじゃなく、高校2年の文理選択で、科目の好き嫌いと、「とりあえず理系を選んでおけば、いざとなれば文系に変更ができるかな」と思って理系を選択しました。実は「理系の方が就職に有利」という情報を見た影響もありまして。工学部の女子率の低さはあまり不安には思いませんでした。
種市 青森県六ヶ所村という原子力産業が盛んな地域で生まれ育ち、中学生の頃から原子力に興味がありました。何度か東北大学の先生方とお話する機会に恵まれ、現在所属している量子エネルギー工学専攻で勉強したいと思いました。
長尾 高校生の時、国語や暗記が苦手で理系に行くしかないと思い、理系を選びました。既知の知識を使って新しいものを創る、工学のイメージに惹かれて志望しました。
内田 私は理数科目が苦手でしたが、生物や環境に直接関わりたかったので、理系を選びました。
村田 高校生の時、文系より理系の勉強が楽しかったので、理系を選びました。オープンキャンパスなどで工学部がおもしろいと思い、高校2年の時には決めていました。
工学部のイメージ、良い意味で裏切る
松八重 実際に工学部に入って、ギャップはあった?
大足 材料研究といっても自分の想像以上に色々な分野があることに驚きました。今は、高校3年の時に自分がやりたかった研究とは全然違う研究室に入っています。
種市 工学分野ばかり勉強すると思っていましたが、全学部共通科目の心理学や中国語など、色々な勉強ができておもしろかったです。
長尾 私は茨城大学で化学を専攻していましたが、在学中に放射線のポジティブな面も見つけたいと興味を持ち、がんの放射線治療を研究している東北大の研究室を見つけて、大学院から進学しました。機械系なので機械ばかりだろうと思っていましたが、化学の知識を活かした研究テーマを先生が考えてくださり、大学4年間で学んだ知識も無駄にはなりませんでした。
内田 高校生の頃は生物や環境保全をやるなら理学部や農学部かなと思い、土木工学は全く視野にありませんでした。ひょんなことから工学に入りましたが、工学系は社会と密接に関連する研究ができるんだと実感し、現在に至ります。
気になる低女子率
松八重 工学部の女子率は約一割と低いけど、良い面と悪い面は?
大足 工学部の男子は皆優しいと感じました。女子の友達は確かに少ないけど困ったことは特になく、プラスのイメージが大きいです。
村田 女性が少なく心細いところもあるけど、まわりの先輩も助けてくれるので、心配はないです。
種市 女子が少ないので、自然と女子同士で仲良くなれます。
内田 学科にもよりますが、女子比率は意外と低くないと思います。
工学女子の生活
松八重 研究以外はどんな活動をしているの?
種市 週2、3回は飲食のバイトをしています。バイトで貯めたお金で半年に1度は旅行に行きます。
長尾 研究室にいる時間は自分で決められる研究室なので、研究以外の時は研究室のメンバーとよく楽天の試合に行きます。
内田 私の場合は、学部時は部活と授業がメイン、大学院修士の時は研究70%、バイトと自由時間が30%、博士の今はほぼ研究です。でも、息抜きもしっかりしてバランスを取っていますよ。
大足 学部時代は男子ラクロス部のマネージャーをしていて、部活中心の生活でした。休日は試合で遠征することが多く、全国様々な場所に行きました。特に最後の年は、部史上初となる全国ベスト4という結果を残すことができて、本当に嬉しかったです。
英語で話す機会
松八重 海外には行く?
村田 外務省の対日理解促進交流プログラムなどで、米国の大学や高校などを訪問しました。
種市 海外の原子力発電所を見学する学生向けのプロジェクトで、イギリスとドイツへ渡航しました。
松八重 英語はよく使う?
内田 国際学会や博士のゼミは、英語です。東北大学工学系は研究レベルが高いので、ヨーロッパやアジアなどから留学生が来ていて、色々な国の人と交流ができます。
松八重 高校生からは英語が不安という声もあるけど、どうかな?
村田 大学に入った後にどうしたいかが大事で、勉強したいと思う時に勉強するのがよいと思います。
内田 伝えたいことがなければ、英語を話す必然性がないので、「伝えたい」気持ちの方が大事。大学には留学生も多く、その機会は多いので、何とかなりますよ。
工学部で好きなことに挑戦、成長を実感。
松八重 東北大学工学部で学んで、自分は成長したと思う?
内田 私は論理的に考えることが苦手でしたが、問題解決のためのロジックを組み立てる工学部的な思考がだいぶ鍛えられました。
長尾 制約のある条件下、目的を達成するまでの道筋を効率的に組み立てることが得意になりました。
種市 世の中に情報が溢れる中、何が正しくて間違っているか判断できる正しい専門知識を身につけ、自ら判断できるようになりました。
大足 高校と比べて、大学では自ら考え行動することが求められるので、主体性が身につきました。
村田 もともと文系科目が得意で、最初は授業でわからないこともあり大変でした。けれども、だんだん先生の話もわかるようになり、今は楽しいです。得意な文章書きも活かせ、足りない部分は補える、工学部を選んでよかったです。
後輩たちへのメッセージ
松八重 最後に、中高生たちへメッセージをお願いします。
内田 できる・できないで考えることも必要ですが、好きなことを大事にしてください。今は具体的なイメージがなくとも、行きたい方向に自然とつながると思います。
長尾 「できない」から諦めるのではなく「やりたい」ことに素直になることが私も大事と思います。
種市 与えられたことを淡々とこなすだけの受身の勉強から、積極的に色々なことを自分で学ぶ勉強へのシフトが大切だと思います。
大足 目標が早く決まることに越したことは無いですが、焦って目標や夢を無理矢理見つけることはしないでください。いつか目標ができた時に安心して目標に向かえるよう、今を
大切にしてください。
村田 環境や心意気さえ整えば、わずかな時間でも成長できます。悩む暇があるなら行動、もしくは開き直って息抜きして、上手に時間を使って今を楽しんでください。
― 皆さん、ありがとうございました。