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(7)へそまがりでいい/連載エッセイ「風に立つ」(南部健一さん)

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連載エッセイ 風に立つ

(7)へそまがりでいい

「雁がわたる、鳴いてわたる。鳴くはなげきか喜びか」。小三の音楽で教わった。僕は「雁(かり)」を「がん」と歌ったので先生が怒った。「がんではだめですか」。先生はにらんで返事もしてくれない。中二で連立1次方程式を教わった。「yはいりません」と言って、僕はxだけですべての問題を解いた。小島先生は、「おもしろいわ。それでいいのよ」と優しかった。先生方にほめられたことがなかった僕はがぜん勉強意欲がわき、中二の数学は最後のテスト以外はすべて満点だった。あれから57年、今も先生から励ましの年賀状が来る。連立方程式は科学の問題を解く基本。未知数はx、yの2元ではなくいまや100万を超える。昨年私は、スパコンで、100万元方程式を1秒で解く方法を見つけた。胸が躍った。

南部 健一  (東北大学名誉教授、2008年紫綬褒章受章)
ひのき進学教室特別講師
南部 健一 (東北大学名誉教授、2008年紫綬褒章受章)
なんぶ・けんいち
1943年金沢市生まれ。工学博士、東北大学名誉教授。百年余学界の難問と言われたボルツマン方程式の解法を1980年、世界で初めて発見。流体工学研究に関する功績が認められ、2008年紫綬褒章受章。

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